沖縄では、昨日旧暦12月8日、「ムーチー」の日を迎えていたのですね。複数のてぃーだブロガーがそう書かれていて、気づきました(遅いぞっ)。ムーチーとは、餅のことです、県外の皆さんへ念のため。
健康・長寿を祈って、サンニン(月桃)の葉(クバの葉で代用する場合もあるみたい)に包んだ餅を食すのです。餅といっても、内地のそれとは違って、餅粉に田芋や砂糖を練り合わせた、粘着性の強い、甘い餅。私も沖縄にいれば、知人からおすそ分けしていただいたはず。ああ、早く沖縄に帰りたい(苦笑)。
しかし、いわゆるムーチービーサー(寒さ)は、なかったようですね、きのうの沖縄は。きょうはちょっと肌寒いらしいですが。
東京は、しっかり、グッと寒さが戻ってます。先日のポカポカ陽気が嘘のようです。
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さて、琉球ゴールデンキングスや琉球コラソンのアウェーの戦いも、大いに気になる週末。だがしかし、正直なところ、最も気になる出来事はといえば、もちろん「名護市長選挙」(24日、日曜日に投開票)である。
わたしも、仕事上尻に火がついて燃え盛って大変な状態ではあるが、この週末ばかりは、名護市民の皆さんに、ささやかながら、一所懸命、心を寄せたいと思うのである。
たくさんの方がいろんな場所で指摘してきたことだが、そもそも人口6万人ほどの地方都市の市民が、日米同盟の根幹に関わることの判断を迫られるなんて、そもそもあってはならないことである。
しかし、泣いても笑っても、投票は明日なのだ。良識ある多くの名護市民は、この選挙の意味をとっくにわかっているし、憤りもジレンマも抱えつつ、投票所へ向かうはず。だって、政府は、鳩山首相は、この市長選挙の結果を「普天間移設」の参考にする、という意味のことを再三表明してきているわけだから。なんとしても、ここは「新基地建設反対」の民意を示して、新人候補を当選させねばならないのである。
一方、じつは明らかな「基地建設誘致派」である現職陣営は、争点隠しに躍起になっているようだ。現行計画なんぞは、議会の承認もなんにも経ずに、現職市長ひとりが永田町へ出かけていって、受け入れ表明をしたとんでもない案なのである。なし崩し的に、甚だしい自然環境破壊と人的被害の恐れのある巨大基地建設計画になってしまっているのである。
前知事の稲嶺恵一氏でさえ、様々な条件付きだったはずの以前の合意案が無視され、現行計画にすり替えられたことに対して不快感を示しているほどだ。じつは、確認書とやらにサインはしてしまったのだが、本当の意味で合意したつもりはない、とさえ語っているのである(計画の張本人の防衛省でさえ、国と県とは必ずしも合意したとはいえない、という見解を最近になって示している)。
本当は、こんなものを受け入れたら、名護市民は「末代の恥」をつくることになると思わねばならないのだが、どうやら現職陣営は、いまだに「アメとムチ」の「アメ」ばかりを市民の前にちらつかせて、集票に躍起になっているらしい。あるいは、土建業界あげて、関係する有権者にプレッシャーをかけているようでもある。あくまで「新基地建設問題」という争点を隠して、振興だ、雇用だと叫んでいることだけは間違いない。
だから今、「油断は禁物の最終盤戦」に差し掛かっているのだと思う。
個人的には当然、新人候補の圧勝を願っているけれども、なりふりかまわぬ現職陣営の巻き返しも恐ろしいものがある。
わたしは12年前(97年12月)の基地建設の是非を問う市民投票に際して、前後数ヵ月にわたって、辺野古と周辺の東海岸を中心に名護市の人々の取材をさせていただいている。
市民投票には、公職選挙法違反などの罰則が適用されないのをよいことに、基地誘致派と自民党政権はタッグを組んで、なりふりかまわぬ工作をした。
その象徴が、防衛施設庁(当時)職員の大量動員であった。税金で働いている国家公務員が、勤務時間中に「基地建設に賛成」させるための戸別訪問を徹底的に繰り広げたのだ。職員が各戸に配ったのは、基地建設があたかもバラ色のテーマパーク建設であるかのごとくに錯覚させるような、綺麗なパンフレットだった。ふと、当時沖縄に住んでいた作家の池澤夏樹さんの言葉を思い出した。わたしの呼び出しに応じてくれて、喫茶店で落ち合ったとき、池澤さんは自民党政権のやり方を指して、「シャイレス(恥知らず)もいいとこです」と話していたものだ。
しかしそんな酷い環境の中でも、名護市民は踏ん張った。「基地建設反対」の票は、しっかり過半数に達したのだ。
そこで決着はついたはずだったのに、当時の比嘉鉄也市長は、この民意を見事に破り捨てて、市民投票のわずか三日後に、のこのこ首相官邸まで出かけていって「基地受け入れ」を表明し、そして辞任した。
ここから、名護市民同士の長い長い争いが始まってしまったのである。
その比嘉鉄也氏は、現在地元の名桜大学理事長の職に収まっているのだが、ついに今回、自分の子分である現職の選挙本部長まで買って出ているわけである。おそらくプライドをかけて巻き返しを図っているはずだ。
わたしとしては、遠い東京の空の下から、祈るしかない。
横暴がまかり通ることがありませんように。
名護市民の良識が、毅然と示されますように。
賢明なる名護市民の皆さん、お疲れさまです。皆さんの努力、真摯な思いが、きっと報われますように。
本当に心から、祈っております。