2010年03月26日
極私的ニュース解説。普天間基地移設問題・36。
今週、少し迷うことがあった。ある週刊誌の「おバカな記事」を、当ブログで取り上げるべきかどうか、についてである。
なぜ少し迷ったかといえば、「おバカな記事」を載せた週刊誌とは、ライターとしてのわたしがいちばん世話になってきている「週刊現代」だったからである。昔からちょくちょく原稿を書かせてもらってきたこの編集部に、今も複数の有能な編集者がいることをわたしは知っている。そのなかには、間違いなく恩人といってよいほど、非常に世話になっている人もいる。毎週、「週刊現代」を沖縄のわたしに送ってくれる人もいる。今週は、連休の関係の変則発売か、火曜日にわが郵便受けに届いている(通常は東京で月曜発売なのだが、今号は先週末には発行されていたのだろう)。
さて、その4月3日号を手にして、わたしは驚き、残念に思った。というか、笑ってしまった。あまりにお粗末な記事が、「独占スクープ」と強調され、トップ記事の扱いで掲載されていたのだ。
タイトルは『スクープ やっぱり県内だった 計画立案者が実名で明かす 普天間基地移設「これが秘密交渉の全貌だ」』。
何事かと思って急いで読んでみたものの、まず第一に「ああ、ガッカリ」であった。それは、なんのことはない遥か以前に消え去った、実現性ゼロの、無謀な「勝連沖埋め立て計画案」をめぐる話にすぎなかった。こんなものを、沖縄県民が許すはずがない。沖縄の実業家・太田範雄氏が、最近もまだこのプランにご執心であることは、すでに沖縄の地元紙の報道でも知らされていたが、その太田氏の相談に乗って前向きに動き出したのが、平野博文官房長官であることも、あたかも重要なことのように、週刊現代は報じている。
沖縄県民は、平野氏が最低最悪の政治家であることを見抜いている。新基地建設反対の名護市長が誕生したときに発した「斟酌しなければいけないという理由はない」という言葉が、平野博文という政治家の本質をあらわす言葉であることも、多くの人が見抜いている。
たまたま鳩山由紀夫氏の側近であっただけで官房長官という要職に就いてしまったこの政治家、沖縄の歴史と現状について、沖縄の民意について、不勉強と無理解を足して10倍したぐらいのお粗末さをことあるごとに露呈してきた。その人が、政府・与党の「沖縄基地問題検討委員会」のトップにいることは、そもそも非常に不幸なことであるが、この記事を書いた人も承認した編集者も、そのことに対する認識が、かなり甘かったのではないだろうか。
「普天間基地移設問題」を少しでも注意を払いつつ見守ってきた人なら、とてもトップ記事にしようとは思わない、この「勝連沖埋め立て案」である。
きょうの時点で、平野氏が、およそこの案かまたはバリエーション案を「普天間基地移設」の政府案の一つとしつつあることが報道を通じて伝わってきているが、まぁ、ナンセンスというほかない。
断言するが、実現性はゼロである。提案者の太田氏やそれを受けた平野氏がどんなに頑張ったところで、こんなものは、沖縄県民が許さない。
この記事の駄目なところは、ただひたすら、提案者の言い分の垂れ流しのみで、客観的な検証が皆無であること。そして、県内移設を沖縄側から積極的に提案しているかのような誤ったイメージを読者に与えかねない点。その2点のせいで、説得力のない最悪の記事になっている。記事の作り手の側にある無自覚さが、沖縄県民に不利を与えかねないという点でも、看過できない。
本来は、無視すればよかった記事なのだが、自分のところに毎号届く週刊誌ゆえ、まるで触れないのも不自然という気分になって書いてしまった。優秀な人材のいる編集部だと知っているだけに、残念なことである。
わたしは自分がライターとしてどれほどのもんか、分はわきまえているつもりである。人様に対して偉そうなことをいえる人生も送ってきていない。そんなわたしが自分のことを棚にあげて、批判しなければならないと思う記事もある。つまりは、そういうことなのだ。
場合によっては、わたしが「対米追従・沖縄切り捨て」の「犯罪的社説」を書きなぐってきた「おバカ」な新聞と呼ぶ「読売」の確信犯ぶり(だって、旧政権同士の辺野古埋め立て巨大基地計画の合意こそが正しい、というのが読売の一貫した主張なんだから!!)と比べても、無意識の「沖縄差別」が匂ってくる分、要注意というべきかもしれない。
ちなみに、その「犯罪的社説」の読売でさえ、那覇支局員は普通に頑張って取材して、本日未明には、WEB上にまともな記事を載せているのだ。
2010年3月26日 YOMIURI ONLINEより
【普天間移設2案「沖縄を愚弄」激怒する地元】
→http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100326-OYT1T00135.htm?from=nwla
米軍普天間飛行場の移設問題は25日、政府が米軍キャンプ・シュワブ(名護市など)陸上部など県内2案を軸に米側と交渉入りすることが判明し、県民が新政権に寄せた大きな期待は裏切られる形となった。「沖縄を愚弄(ぐろう)した」。県内には激しい怒りが広がった。
シュワブ陸上部案と並ぶのは、勝連半島(うるま市)のホワイトビーチ沖埋め立て案。うるま市では同日夜、同案に反対する市民総決起大会が開かれ、集まった約650人が気勢を上げた。
主催者側が「鳩山総理は『最低でも県外』と表明した。沖縄を愚弄する政治に怒りをもって抗議する」との決議案を力を込めて読み上げると、満場の拍手で採択した。住民の女性代表、青年代表たちが埋め立て反対を訴えるメッセージを読み上げるたび、「そうだ」などのかけ声とともに大きな歓声が起きた。
政党代表として来場した民主党沖縄県連の新垣安弘幹事長は、壇上でメッセージを読み上げる番が回って来ると、「民主党への怒りがわき上がっていると思う。本当に申し訳ない」とおわびするしかなかった。
県連の議員団は24日、平野官房長官と面談し、県内移設反対を訴えたばかり。メンバーだった地元選出の山内末子県議は「辺野古に反対しながら、同じ海を埋め立てる案なんて自公政権より悪い。なぜ県外移設に本気で取り組んでくれないのか」と唇をかんだ。
名護市の稲嶺進市長も25日夕、市役所で記者団に「首相は県民の思いを大切にすると繰り返し言った。その約束は何だったのか。あきれて物が言えない」と怒りを抑えきれず、声を震わせた。稲嶺市長は、同市辺野古のシュワブ沿岸部を移設先とする現行計画にも、陸上部案にも反対している。「私も、市議会も、県議会も、地元住民もダメと言っている。実現可能性はゼロに近い」と強くけん制した。
現行計画を容認する辺野古の住民でつくる「代替施設推進協議会」の宮城安秀会長(54)も「(陸上部案は)ヘリが集落の上を飛び、普天間の危険性をそのまま辺野古に持ってくることになる。とんでもない話。全区民を上げて反対する」と憤りを隠さなかった。
(以上、2010年3月26日03時06分配信 読売新聞)
というわけで、くどいようだが、「勝連沖案」など、最初から実現性ゼロ。こんなものに取り合って時間を浪費している政府、とくに官房長官の責任は重大であり、本来なら「即刻平野氏更迭」に値するぐらいのことなのだ。
(この項、つづく)
さてさて、興南高校の試合を見ながらなので、落ち着かない。
5回表、1対0で関西(岡山)をリードしている。興南がチャンスをつくった。ゲッツー崩れで2-0に。
エース島袋の調子も悪くない。楽しみだ。
さ、応援応援。
ちばりよーっ。
なぜ少し迷ったかといえば、「おバカな記事」を載せた週刊誌とは、ライターとしてのわたしがいちばん世話になってきている「週刊現代」だったからである。昔からちょくちょく原稿を書かせてもらってきたこの編集部に、今も複数の有能な編集者がいることをわたしは知っている。そのなかには、間違いなく恩人といってよいほど、非常に世話になっている人もいる。毎週、「週刊現代」を沖縄のわたしに送ってくれる人もいる。今週は、連休の関係の変則発売か、火曜日にわが郵便受けに届いている(通常は東京で月曜発売なのだが、今号は先週末には発行されていたのだろう)。
さて、その4月3日号を手にして、わたしは驚き、残念に思った。というか、笑ってしまった。あまりにお粗末な記事が、「独占スクープ」と強調され、トップ記事の扱いで掲載されていたのだ。
タイトルは『スクープ やっぱり県内だった 計画立案者が実名で明かす 普天間基地移設「これが秘密交渉の全貌だ」』。
何事かと思って急いで読んでみたものの、まず第一に「ああ、ガッカリ」であった。それは、なんのことはない遥か以前に消え去った、実現性ゼロの、無謀な「勝連沖埋め立て計画案」をめぐる話にすぎなかった。こんなものを、沖縄県民が許すはずがない。沖縄の実業家・太田範雄氏が、最近もまだこのプランにご執心であることは、すでに沖縄の地元紙の報道でも知らされていたが、その太田氏の相談に乗って前向きに動き出したのが、平野博文官房長官であることも、あたかも重要なことのように、週刊現代は報じている。
沖縄県民は、平野氏が最低最悪の政治家であることを見抜いている。新基地建設反対の名護市長が誕生したときに発した「斟酌しなければいけないという理由はない」という言葉が、平野博文という政治家の本質をあらわす言葉であることも、多くの人が見抜いている。
たまたま鳩山由紀夫氏の側近であっただけで官房長官という要職に就いてしまったこの政治家、沖縄の歴史と現状について、沖縄の民意について、不勉強と無理解を足して10倍したぐらいのお粗末さをことあるごとに露呈してきた。その人が、政府・与党の「沖縄基地問題検討委員会」のトップにいることは、そもそも非常に不幸なことであるが、この記事を書いた人も承認した編集者も、そのことに対する認識が、かなり甘かったのではないだろうか。
「普天間基地移設問題」を少しでも注意を払いつつ見守ってきた人なら、とてもトップ記事にしようとは思わない、この「勝連沖埋め立て案」である。
きょうの時点で、平野氏が、およそこの案かまたはバリエーション案を「普天間基地移設」の政府案の一つとしつつあることが報道を通じて伝わってきているが、まぁ、ナンセンスというほかない。
断言するが、実現性はゼロである。提案者の太田氏やそれを受けた平野氏がどんなに頑張ったところで、こんなものは、沖縄県民が許さない。
この記事の駄目なところは、ただひたすら、提案者の言い分の垂れ流しのみで、客観的な検証が皆無であること。そして、県内移設を沖縄側から積極的に提案しているかのような誤ったイメージを読者に与えかねない点。その2点のせいで、説得力のない最悪の記事になっている。記事の作り手の側にある無自覚さが、沖縄県民に不利を与えかねないという点でも、看過できない。
本来は、無視すればよかった記事なのだが、自分のところに毎号届く週刊誌ゆえ、まるで触れないのも不自然という気分になって書いてしまった。優秀な人材のいる編集部だと知っているだけに、残念なことである。
わたしは自分がライターとしてどれほどのもんか、分はわきまえているつもりである。人様に対して偉そうなことをいえる人生も送ってきていない。そんなわたしが自分のことを棚にあげて、批判しなければならないと思う記事もある。つまりは、そういうことなのだ。
場合によっては、わたしが「対米追従・沖縄切り捨て」の「犯罪的社説」を書きなぐってきた「おバカ」な新聞と呼ぶ「読売」の確信犯ぶり(だって、旧政権同士の辺野古埋め立て巨大基地計画の合意こそが正しい、というのが読売の一貫した主張なんだから!!)と比べても、無意識の「沖縄差別」が匂ってくる分、要注意というべきかもしれない。
ちなみに、その「犯罪的社説」の読売でさえ、那覇支局員は普通に頑張って取材して、本日未明には、WEB上にまともな記事を載せているのだ。
2010年3月26日 YOMIURI ONLINEより
【普天間移設2案「沖縄を愚弄」激怒する地元】
→http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100326-OYT1T00135.htm?from=nwla
米軍普天間飛行場の移設問題は25日、政府が米軍キャンプ・シュワブ(名護市など)陸上部など県内2案を軸に米側と交渉入りすることが判明し、県民が新政権に寄せた大きな期待は裏切られる形となった。「沖縄を愚弄(ぐろう)した」。県内には激しい怒りが広がった。
シュワブ陸上部案と並ぶのは、勝連半島(うるま市)のホワイトビーチ沖埋め立て案。うるま市では同日夜、同案に反対する市民総決起大会が開かれ、集まった約650人が気勢を上げた。
主催者側が「鳩山総理は『最低でも県外』と表明した。沖縄を愚弄する政治に怒りをもって抗議する」との決議案を力を込めて読み上げると、満場の拍手で採択した。住民の女性代表、青年代表たちが埋め立て反対を訴えるメッセージを読み上げるたび、「そうだ」などのかけ声とともに大きな歓声が起きた。
政党代表として来場した民主党沖縄県連の新垣安弘幹事長は、壇上でメッセージを読み上げる番が回って来ると、「民主党への怒りがわき上がっていると思う。本当に申し訳ない」とおわびするしかなかった。
県連の議員団は24日、平野官房長官と面談し、県内移設反対を訴えたばかり。メンバーだった地元選出の山内末子県議は「辺野古に反対しながら、同じ海を埋め立てる案なんて自公政権より悪い。なぜ県外移設に本気で取り組んでくれないのか」と唇をかんだ。
名護市の稲嶺進市長も25日夕、市役所で記者団に「首相は県民の思いを大切にすると繰り返し言った。その約束は何だったのか。あきれて物が言えない」と怒りを抑えきれず、声を震わせた。稲嶺市長は、同市辺野古のシュワブ沿岸部を移設先とする現行計画にも、陸上部案にも反対している。「私も、市議会も、県議会も、地元住民もダメと言っている。実現可能性はゼロに近い」と強くけん制した。
現行計画を容認する辺野古の住民でつくる「代替施設推進協議会」の宮城安秀会長(54)も「(陸上部案は)ヘリが集落の上を飛び、普天間の危険性をそのまま辺野古に持ってくることになる。とんでもない話。全区民を上げて反対する」と憤りを隠さなかった。
(以上、2010年3月26日03時06分配信 読売新聞)
というわけで、くどいようだが、「勝連沖案」など、最初から実現性ゼロ。こんなものに取り合って時間を浪費している政府、とくに官房長官の責任は重大であり、本来なら「即刻平野氏更迭」に値するぐらいのことなのだ。
(この項、つづく)
さてさて、興南高校の試合を見ながらなので、落ち着かない。
5回表、1対0で関西(岡山)をリードしている。興南がチャンスをつくった。ゲッツー崩れで2-0に。
エース島袋の調子も悪くない。楽しみだ。
さ、応援応援。
ちばりよーっ。
Posted by watanatsu at 10:00
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