2010年12月01日
「クローズアップ現代」でのNHK政治部記者の暴論、許せん!!
(沖縄県知事選挙を振り返って・2)
沖縄は、死者と生者の距離が近い土地である。
死者と真摯に親しく向き合う伝統がある。
大恩人・金城清子さん(金城眞吉沖縄尚学高校ボクシング部監督夫人)が他界されてから、はや3週間が過ぎた。故人の教え子や、親戚、友人知人にまじって、毎週月曜日、つまり「七日」ごとに、わたしもお線香だけはあげさせていただいている。
11月29日の月曜日、那覇市首里石嶺の金城家からの帰り道、豊見城市内に入ったところで、ふと気になって、信号待ちの間に携帯ワンセグのスイッチを入れた。
知事選翌日のNHKの夜7時のニュースぐらいは視ておこうかと思ったのだが、ニュースはほとんど終わろうとしている時間だった。しかし続いて、「クローズアップ現代」が始まった。この夜はたまたま、「沖縄の選択 普天間はどこへ」というテーマの、今回の知事選に絡んだ番組だった。
急いで最寄りのスーパーの駐車場にクルマを停めて、この番組を注視した。
最近滅多にテレビを視なくなっているわたくしめであるが、知事選の結果を受けて、NHKが何をどう報じるのか、知っておく意味はあると思った。
悪い意味で、予想通りの結末が待っていた。
番組の最後に、司会者の畠山智之キャスターから「日本(政府)はどうすればよいのか」と感想を求められた政治部の山口太一記者は、世論を間違った方向へ誘導しようとする者が発する、すなわち読売、産経、日経などの社説と同じ意味で低レベルの、典型的な意見を述べたのだ。
一字一句すべてメモしたわけではないが、その山口記者は、およそ次のような暴論で、番組を締めくくってみせたのだ。
「アメリカの態度(方針)は、はっきりしています。辺野古に普天間基地を移設するか、普天間をそのままにしておくか、です」
「民主党政権は、沖縄県民に期待を抱かせて約束を守らなかったわけですから、なぜ再び辺野古になったのか、誠意をもってお詫びするのが第一歩だと思います」
これでは、なんとかの一つ覚えで「日米合意を踏襲して、沖縄の軽減をはかる」と繰り返している思考停止状態の首相の発言と、まったく同じ主張である。
読売、産経、日経などの社説を読まされて、すでに暴論に驚かなくなってしまっている自分の感覚が、恨めしくもある。
だが、こんな暴論を許してはいけない、ということだけは、はっきりと述べておかねばならない。
偶然とはいえ、わたしはしっかりと視たし、聴いた。
NHK政治部記者の発したこの暴論を、わたしは許すわけにはいかない。
NHKという大きな報道機関が、しかも「クローズアップ現代」という、ひとつのテーマを通常のニュースよりも深く掘り下げるべき番組枠内で、「官房機密費」をもらったのではないかと疑われても仕方のないような、政府ベッタリの、「沖縄の民意」を軽んじる見解を視聴者に押し付けるとは。。。。
報道機関としての検証能力は皆無、批判精神もゼロ。
山口記者よ、なんの根拠も示さず、「辺野古移設」か「普天間固定化」の二者択一しか米国政府は考えていないと、よくぞ断言できたものですな。その無謀さ、恐れ入りましたぞ。
そして、米国の強行姿勢を無批判に受け入れて、沖縄県民に負担を押し付け続けようとするその「差別的態度」に、きっとあなたは、まるで無自覚なのでありましょうな。そうでなければ、やっぱり読売や産経の論説委員たちと同じように、「確信犯」ということになりますな。
日ごろから、NHK政治担当解説委員たちの「普天間問題」に関する説得力のなさと不勉強ぶりを、嗤いつづけているわたくしめではあるが、知事選直後のタイムリーさで、ここまで露骨な世論誘導番組を見せ付けられたのでは、黙っていろといわれても無理である。
ちなみにこの番組、当たり障りのない知事選ドキュメントを流した上で、知事に再選されたばかりの仲井真弘多氏も、沖縄からの中継というかたちで出演させていた。
仲井真氏の言葉には、やはり従来の「辺野古移設容認」を自己正当化する傾向がつよく、これまた批判に値する部分があったが、NHK政治部記者の暴論に比べたら可愛いものであった。
少なくとも、スタジオのその先に広がる全国の視聴者に向けて、仲井真氏は「日米安保(の恩恵)を享受している北海道から鹿児島までの全国民で、基地負担を考えてほしい」という要望を述べていた。
だがNHK側は、選挙で選ばれたばかりの沖縄の民意を代表する者のその声を、番組最後の締めくくりの部分で、バッサリと切り捨てたわけである。
つまりこれは、外務大臣時代の岡田克也幹事長が沖縄入りし、名護市民に対して「(新基地を)名護が受け入れなければ、普天間の危険はそのまま残るが、それでいいのか」と恫喝したのと、まったく同じ姿勢なのである。
大問題である。
この国のマスメディアは、本当に絶望的なまでに、おバカな状況に陥っている。
わたしたちは、こんなものに惑わされたり、誘導されたり、マインドコントロールされたりせぬように、よくよく気をつけなければならない。
くどいようだが、米国内でも、「在沖縄海兵隊不要論」が、民主・共和両党の有力国会議員や軍事・安全保障の専門家の間から沸き起こっているのだという事実を、申し添えておこう。
「抑止力」という言葉を使いたがる官僚・政治家、メディア業界従事者、さらにはネット右翼とよばれる人間たちは、東洋一の巨大なエアフォース・ベースである「嘉手納空軍基地」の持つ能力と、常に「休眠状態」とさえいわれる在沖米海兵隊の能力とを、ごっちゃにせずに語るべきである。
はっきり言おう。世界一危険な普天間基地を即刻撤去したって、本当は、アメリカさんは何も困らないのだよ。
普天間がなくなったら、「次善の策」を当然のように考えるだけなのである。
尖閣諸島付近の緊張状態や北朝鮮の脅威と、沖縄の海兵隊を結びつけて語ること自体、欺瞞に満ちた行為である。
では、普天間基地撤去を拒んでいるのは、いったい誰なのか。
胸に手を当てて考えたまえ。官僚、政治家、メディア関係者の諸君よ!!
沖縄差別主義者の「確信犯」たちよ。
(この項、つづく)
※お詫び※
12月1日19時ごろから、ただいま22時近くまでにご訪問くださった方、最後の文章が切れてしまっていて、ご迷惑をおかけしました。21時57分現在、思い出しつつ復元し、さらに若干加筆しました。
沖縄は、死者と生者の距離が近い土地である。
死者と真摯に親しく向き合う伝統がある。
大恩人・金城清子さん(金城眞吉沖縄尚学高校ボクシング部監督夫人)が他界されてから、はや3週間が過ぎた。故人の教え子や、親戚、友人知人にまじって、毎週月曜日、つまり「七日」ごとに、わたしもお線香だけはあげさせていただいている。
11月29日の月曜日、那覇市首里石嶺の金城家からの帰り道、豊見城市内に入ったところで、ふと気になって、信号待ちの間に携帯ワンセグのスイッチを入れた。
知事選翌日のNHKの夜7時のニュースぐらいは視ておこうかと思ったのだが、ニュースはほとんど終わろうとしている時間だった。しかし続いて、「クローズアップ現代」が始まった。この夜はたまたま、「沖縄の選択 普天間はどこへ」というテーマの、今回の知事選に絡んだ番組だった。
急いで最寄りのスーパーの駐車場にクルマを停めて、この番組を注視した。
最近滅多にテレビを視なくなっているわたくしめであるが、知事選の結果を受けて、NHKが何をどう報じるのか、知っておく意味はあると思った。
悪い意味で、予想通りの結末が待っていた。
番組の最後に、司会者の畠山智之キャスターから「日本(政府)はどうすればよいのか」と感想を求められた政治部の山口太一記者は、世論を間違った方向へ誘導しようとする者が発する、すなわち読売、産経、日経などの社説と同じ意味で低レベルの、典型的な意見を述べたのだ。
一字一句すべてメモしたわけではないが、その山口記者は、およそ次のような暴論で、番組を締めくくってみせたのだ。
「アメリカの態度(方針)は、はっきりしています。辺野古に普天間基地を移設するか、普天間をそのままにしておくか、です」
「民主党政権は、沖縄県民に期待を抱かせて約束を守らなかったわけですから、なぜ再び辺野古になったのか、誠意をもってお詫びするのが第一歩だと思います」
これでは、なんとかの一つ覚えで「日米合意を踏襲して、沖縄の軽減をはかる」と繰り返している思考停止状態の首相の発言と、まったく同じ主張である。
読売、産経、日経などの社説を読まされて、すでに暴論に驚かなくなってしまっている自分の感覚が、恨めしくもある。
だが、こんな暴論を許してはいけない、ということだけは、はっきりと述べておかねばならない。
偶然とはいえ、わたしはしっかりと視たし、聴いた。
NHK政治部記者の発したこの暴論を、わたしは許すわけにはいかない。
NHKという大きな報道機関が、しかも「クローズアップ現代」という、ひとつのテーマを通常のニュースよりも深く掘り下げるべき番組枠内で、「官房機密費」をもらったのではないかと疑われても仕方のないような、政府ベッタリの、「沖縄の民意」を軽んじる見解を視聴者に押し付けるとは。。。。
報道機関としての検証能力は皆無、批判精神もゼロ。
山口記者よ、なんの根拠も示さず、「辺野古移設」か「普天間固定化」の二者択一しか米国政府は考えていないと、よくぞ断言できたものですな。その無謀さ、恐れ入りましたぞ。
そして、米国の強行姿勢を無批判に受け入れて、沖縄県民に負担を押し付け続けようとするその「差別的態度」に、きっとあなたは、まるで無自覚なのでありましょうな。そうでなければ、やっぱり読売や産経の論説委員たちと同じように、「確信犯」ということになりますな。
日ごろから、NHK政治担当解説委員たちの「普天間問題」に関する説得力のなさと不勉強ぶりを、嗤いつづけているわたくしめではあるが、知事選直後のタイムリーさで、ここまで露骨な世論誘導番組を見せ付けられたのでは、黙っていろといわれても無理である。
ちなみにこの番組、当たり障りのない知事選ドキュメントを流した上で、知事に再選されたばかりの仲井真弘多氏も、沖縄からの中継というかたちで出演させていた。
仲井真氏の言葉には、やはり従来の「辺野古移設容認」を自己正当化する傾向がつよく、これまた批判に値する部分があったが、NHK政治部記者の暴論に比べたら可愛いものであった。
少なくとも、スタジオのその先に広がる全国の視聴者に向けて、仲井真氏は「日米安保(の恩恵)を享受している北海道から鹿児島までの全国民で、基地負担を考えてほしい」という要望を述べていた。
だがNHK側は、選挙で選ばれたばかりの沖縄の民意を代表する者のその声を、番組最後の締めくくりの部分で、バッサリと切り捨てたわけである。
つまりこれは、外務大臣時代の岡田克也幹事長が沖縄入りし、名護市民に対して「(新基地を)名護が受け入れなければ、普天間の危険はそのまま残るが、それでいいのか」と恫喝したのと、まったく同じ姿勢なのである。
大問題である。
この国のマスメディアは、本当に絶望的なまでに、おバカな状況に陥っている。
わたしたちは、こんなものに惑わされたり、誘導されたり、マインドコントロールされたりせぬように、よくよく気をつけなければならない。
くどいようだが、米国内でも、「在沖縄海兵隊不要論」が、民主・共和両党の有力国会議員や軍事・安全保障の専門家の間から沸き起こっているのだという事実を、申し添えておこう。
「抑止力」という言葉を使いたがる官僚・政治家、メディア業界従事者、さらにはネット右翼とよばれる人間たちは、東洋一の巨大なエアフォース・ベースである「嘉手納空軍基地」の持つ能力と、常に「休眠状態」とさえいわれる在沖米海兵隊の能力とを、ごっちゃにせずに語るべきである。
はっきり言おう。世界一危険な普天間基地を即刻撤去したって、本当は、アメリカさんは何も困らないのだよ。
普天間がなくなったら、「次善の策」を当然のように考えるだけなのである。
尖閣諸島付近の緊張状態や北朝鮮の脅威と、沖縄の海兵隊を結びつけて語ること自体、欺瞞に満ちた行為である。
では、普天間基地撤去を拒んでいるのは、いったい誰なのか。
胸に手を当てて考えたまえ。官僚、政治家、メディア関係者の諸君よ!!
沖縄差別主義者の「確信犯」たちよ。
(この項、つづく)
※お詫び※
12月1日19時ごろから、ただいま22時近くまでにご訪問くださった方、最後の文章が切れてしまっていて、ご迷惑をおかけしました。21時57分現在、思い出しつつ復元し、さらに若干加筆しました。
Posted by watanatsu at 11:58
│時事問題
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NHK政治部の山口太一記者について・・・【辺野古浜通信】at 2010年12月07日 01:29