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2012年11月09日

朗読劇『私の村から戦争が始まる』に刺激受けて。【追記】あり。

ご無沙汰しました。じつに13日ぶりのブログ更新です。
言い訳から始めます。
頭と心を整理するためのブログ記事を日曜日に書きはじめて、そこではたと気づいたわけです。

普天間基地へのオスプレイ配備強行、米兵による強姦致傷事件、住居侵入傷害事件と蛮行が繰り広げられる沖縄の日々の中でわたしが感じ、考えたことを文字に定着させるには、最低でも原稿用紙何十枚分かのスペースを要する。沖縄で起きてしまっていることは、それほどまでに、とんでもないこと。重大かつ深刻な話。慌てて書けばよいというものでもない。場所を改めることも含めて、まとまった文章を書くことを考えよう。と、思っているうちに、嗚呼、また数日経ってしまった。

その間、まったくありがたいことなのだが、複数の読者から叱咤激励・催促のメッセージを頂戴したり、一昨日などはついにわが老親から「10日以上ブログが更新されていないが、元気か」というメールが来てしまった。若いころならこの「親心」に対しては根拠不明にして照れくささ半分の反発心も首をもたげたかもしれないが、この歳になると、ただただ感謝あるのみである。

わたしとしては毎日フェイスブックhttps://www.facebook.com/#!/natsuhiko.watase (もし友達リクエストを下さる場合は、ひと言メッセージも送って下さると幸いです。メッセージがないと僭越ながら「承認のハードル」は高くなります)やツイッターhttps://twitter.com/natsuhikowataseを利用していて、ささやかながら何かしら発信したり情報共有を試みたりしているものだから、ブログをサボっていることに無頓着になるきらいもある。しかし、ツイッターともフェイスブックとも無縁にして、ブログのみを読んでくださっている読者が一定数おられることも、このたびの励ましによって再認識できたので(当方最初=かれこれ3年半も前に始めたのがブログなのだから、これは当然と言えば当然のことなのですよね。恐縮です!!)、これからはフェイスブック等との重複などもあまり気にせず、大上段に構えず、更新していこうと思う(・・・それでもまたサボってしまったら、また謝ります・・・)。

以上で、「本日の言い訳」は終了です。


                      *


このところ感じ考えてきたことを整理してじっくり書きたくなってきた、という意味のことを、前々回と前回の更新時にも記し、日曜日にそのための作業を始めたわけだが・・・、結局書きなおすことにした。

一昨日の夜、朗読劇『私(わん)の村から戦争が始まる』(於・北谷町ニライセンター)を観ることによって、わたしなりの心と頭の整理の作業が、一歩前進したと感じられたからである。

元もとは「非戦を選ぶ演劇人の会」が本土で行った公演である。
米軍海兵隊のヘリパッド建設(オスプレイ配備を明確に想定した建設)の工事強行に反対し、説明を求め、5年間も座り込むことになった、沖縄北部東村高江区の住民たち。住民の意思も基本的人権も無視し、住民を脅し萎縮させることを狙って「通行妨害」裁判まで起こした防衛省沖縄防衛局。その高江の住民(実在の人物たち)や支援者をモデルにし、高江の村から見えてくる沖縄の状況を描いたいわば「ノンフィクション・ドラマ」である。

ちょいとルポ風にまとめてみる。

この『私の村から戦争が始まる』が、さる11月6日(火)、北谷町の実行委員会主催で、同町ニライセンターのカナイホールにおいて再演されたわけである。台本は最新情報も盛り込んで練り直されたようなので、新作上演に近いかもしれない。

当日のホールは超満員で立ち見客も大勢いた。ギリギリに駆けつけたわたしが悪いのだが、同センターの駐車場はすでに満車状態であった。なんとかズルをして無理をすれば停められなくはないスペースを確保して、開演時刻から数分遅刻で受付にたどり着くと、当日券はありませんという。これは入場お断りという意味ではなくて、「券」という名の紙切れ自体がなくなってしまったという意味と判明してホッとする。チラシすらなくなってしまったとのことで、なーんにももらえず、入場料のみ支払ってホールへ入った。盛況なのだから、何よりである。

というわけで、チラシの写真もなく、おまけに帰り際に挨拶に出てきてくれた出演者たちの姿をスマホで撮りそびれて出てきてしまったので、1ヵ月前の10月7日の沖縄タイムス社会面に載った藤木勇人さんの写真(当日のうちにFacebookで紹介した)を使わせてもらおう。
朗読劇『私の村から戦争が始まる』に刺激受けて。【追記】あり。



藤木勇人さんは、わたしにとって沖縄における大恩人の一人である。
住んで7年目の沖縄にはたくさんの恩人がいるけれど、「大」がつく人は、そうそう多くはない。十数年前、まだ沖縄県民でなかったころのわたしは長期間にわたって藤木さんの行くところ行くところ、くっついて歩き、たくさんのことを吸収させてもらったものである(雪の信州の「ひとり芝居」の公演にくっついてったこともある)。「沖縄」について、奄美にルーツを持ち、米軍の「門前町」コザで生まれ育った藤木さんを通して、たくさんのことを学ばせてもらった。そういう時期が間違いなくあるのだ。そのことを、きちっとした形で文章に残せていないのは、当方の不徳のいたすところである。まだ、あきらめてはいない。

その藤木さんが、上掲の地元紙の記事のように、高江の問題に積極的に関わってくれていると知ったとき、おこがましい言い方にはなるが、嬉しかった。
直後、この演劇に藤木さんが関わること自体を揶揄する大バカ者の文筆家(彼の文章をほとんど読んだことはないが、沖縄の文化に関わっていることを自負しているタチの悪い輩である)がいることにわたしは気づいた。しかしいったい彼は何を逆恨みしているのだろう。わたしはそんなヤツは放っておけばいいと思ったのみ。藤木さんも気にする必要はないのである。藤木さんは藤木さんのやり方で、表現者として、こういう大問題にも関わり続けていってほしいと願うのみである。藤木さんが、この朗読劇の演出まで手がけていることを知ったのは、いよいよ上演が一週間ほど後にせまってきたころの報道を通じてであった。
http://takae.ti-da.net/e4214139.html

藤木さんは、芝居の中では、高江の「ヘリパッドいらない住民の会」の安次嶺現達さん役を演じていた。QAB琉球朝日放送制作のドキュメンタリー『標的の村』でも、安次嶺さん家族がクローズアップされているのだが、わたしも安次嶺さんとは高江やその他の場所でも何度も会っている。6人の子供たちのうちの現在6歳(5歳だったかな)の息子J君はわたしを「友達」と認定してくれたりもしているので、普通の親しみ以上のものを感じてしまっている。だからなんだか不思議な気分になったものである。で、今回の藤木さんの演技自体に対しては、わたしはやや辛口の評価。実在の安次嶺さん本人は、淡々とした語り口の中にも、言葉に情感を込めて語る人なので、藤木さんのしゃべり方が少々「急ぎすぎ」に感じられた。

総じての評価でいえば、朗読劇の内容は素晴らしかった。
重いテーマの朗読劇の中で笑いを誘う場面も何カ所かあり、台本と演出の工夫が感じられて微笑ましかった。
わたしは数分遅れで入場し、演劇の「命」とも呼ぶべき冒頭部分を見逃したのは悔やまれるが(厳密に言えば批評する資格はないのだ)、致命的ではなかったように思えた。
演劇人(この朗読劇の関係者)が、高江を訪ねるに至った経緯、そこで見聞したことを観客に伝えたいという姿勢を示す導入部は、社会的大問題を扱う重みのみでなく、語弊をおそれずに言えば軽やかな印象を与え、問題意識の程度も様々であるはずの不特定多数の観客が、この芝居に入り込みやすい空気を醸し出すことに成功していた。

自然豊かな高江に住み、理不尽な力と闘わなければならなくなった住民の思いを軸にして展開される芝居なのだが、沖縄の大問題を俯瞰で眺め渡そうとする配慮も素晴らしかった。

オスプレイ強行配備(10月1日)、米兵による集団強姦致傷事件(10月16日)、米兵による住居侵入殴打事件(11月2日)といった最近の許しがたい蛮行も台本には練りこまれていた。それだけではない。戦後、辺野古の住民がキャンプ・シュワブを受け入れてしまった経緯や、しかし住民と支援者が力を合わせて辺野古新基地建設を「海上の坐り込み」という非暴力直接行動によって完全に阻止した事実(この基地建設計画自体は、おぞましい話だが日米政府が未だに撤回していない)、沖縄戦時の激しい地上戦の最中に日本兵によってガマ(洞窟=天然の防空壕)から住民が追い出された惨い事実、あるいは、1959年の宮森小学校・米軍ジェット機墜落事故の悲惨な被害現場の証言・・・。

わたしは宮森小の米軍機事故には、かねてより個人的な因縁を感じている。
1959年6月30日の午前中、石川市(現うるま市)の宮森小学校に米軍機が墜落した。

(この項、つづく)
※長くなるので、いったん区切ります。

【追記】
琉球朝日放送のドキュメンタリー『標的の村 国に訴えられた沖縄・高江の住民たち』も必見です。
幸いこちらで視られます。↓↓↓
http://www.dailymotion.com/video/xvvikn_iiii-iiiiiiiii-iiiiiii-2012-12-10_people?search_algo=2
※同番組ディレクター兼ナレーターの三上智恵さんによると、現在1時間番組に拡充編集作業中で、沖縄ローカルで11月27日(火)夜7時放送とのことです。
【さらに追記】
1時間番組(正確には47分バージョン)はこちらです。↓↓↓
http://www.dailymotion.com/video/xvjmcv_iiii_shortfilms



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Posted by watanatsu at 07:36 │時事問題