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2012年05月01日

心からFC琉球を応援するようになった本当の理由。

一つひとつの事象に関して、ツイッターで呟いたか、フェイスブックで掲示したか、それともまだなんにも書いてないのか、時々自信が持てなくなる。いかんいかん。いよいよボケが始まったか。

心の安定のためにも、このブログを発信手段の根幹に据え直して綴っていこう、と改めて意識している5月1日である。
まぁ、しょっちゅうそんなことを言っている気もしなくもないが。
梅雨入り4日目の沖縄は、どんより曇り空。湿度高し。
まずは、ある事象について、駆け足で「気持ちを整理」。

Jリーグ加盟を目指して、現在JFL(日本フットボールリーグ)で戦っている沖縄の球団「FC琉球」について、である。

今シーズン、わたしはFC琉球の試合に、できる限り足を運ぶようにしている。かつてなかったことである。
正直なところ過去には、この球団の経営理念、フロントの体質に大いに疑問を感じていたのみならず、念のため試合を観に行っても選手たちにまるで覇気が感じられずがっかりして帰る……、といった苦い経験もある。
しかし最近は・・・、殊に今春からは、気持ちに大きな変化が生じている。

先週の土曜日(4月28日)にも時間をやりくりして、「FC琉球vs.ツエーゲン金沢」の試合の後半だけでも、と沖縄県立総合運動公園の競技場に駆けつけた。すると、その後半戦になんと、最前列の高橋駿太が見事にハットトリックを決めて、3対2の逆転勝利。
「来た甲斐があった」と、ひとまずは、喜んだ次第である。しかし、手放しで喜べる内容ではなかった。
とにかく相手のボールキープ率が高く、自陣に攻め込まれっぱなし。琉球の守護神・キーパー森本悠馬のファインセーブに何度も救われ、リーグ得点王争い独走中の高橋駿太の、数少ないチャンスで高確率でゴールを決める勝負強さに救われたゲーム。特に「中盤」の弱さが気になる。課題多きチームである。

それでもわたしは、この沖縄にJリーグチームが誕生したらどんなに楽しいかと願っている一人である。
仮にまだまだ問題の多い球団なのだったとしても、その体質改善を期待しつつ、一方ではむしろプラスの要因を発見し、Jリーグ球団の誕生に向けて、ささやかながら応援していきたい、と考えている。

2011年シーズンが始まる前には、球団の田部(たなべ)和良GMの「桜坂市民大学」での講座の受講生となったし、折に触れて、チーム事情に詳しいメディア関係者やサポーターから情報を得るように努めてもきた。

そして決定的ともいえるのは、一冊の本との出会いである。

「ドーピング冤罪事件」に立ち向かい、乗り越えた我那覇和樹と彼を支えた人たちの奮闘ぶりを描いた『争いは本意ならねど』(木村元彦著、集英社インターナショナル刊)を読んで、この事件によって我那覇やチームドクターを傷つけた人々への怒りがふつふつと腹の底から湧き上がり、我那覇を支えた人々への敬意が芽生え、苦難を乗り越えていま故郷沖縄のチームで頑張っている我那覇を応援せずにはいられない、という気持ちになったのだ。

この本が出たのは、昨年末。出たのは知っていたが、読みそびれていた。
そんな2月のある日、旧知のFC琉球サポーター「琉球グラナス」代表・池間弘章さん経営のカフェ「カンプノウ」で、著者・木村元彦氏のトークが行われ、それがustream中継されると知った。それを視聴して、すぐこの本を買いに行こうと決めた。
木村氏の「日本のサッカー界全体が、我那覇選手に感謝すべきなんです」という発言が印象に残っている。
つまり、勇気を出してJリーグ側の処分に異議を唱え、国際スポーツ仲裁裁判所の判断をあおぐ行動に出て、「真っ白な無罪」を勝ち取った行為によって、他のサッカー選手たちが再び「冤罪事件」に巻き込まれることを回避できたし、日本サッカー界全体が安心して「レベル向上」に専心できるようになった、という意味である。

そうして読み終わったころ、たまたま沖縄タイムス学芸部の旧知の記者さんから、沖縄のスポーツに関連するオススメ本を数冊挙げてほしい、という依頼があり、そのインタビューのなかで(3月3日付文化面)、この本も紹介した。

それからまた1ヵ月ほどして、今度は、週刊現代編集部から連絡があった。信頼している編集者が「渡瀬なら、きっとこの本を読んでいるに違いない」と踏んでの「書評」の依頼であった。週刊誌が刊行数ヵ月を経た本について打診してくることも極めて異例である。一説には、この本に対してJリーグや日本サッカー協会上層部が、神経をとがらせていると聞く。しかし一方では、ファンの間に評判が広がり、売れ行きは悪くないとも聞く。

ずばり、多くの人に読んでほしいと今も思っているので、ここに「書評記事」の全文を再録したい。
心からFC琉球を応援するようになった本当の理由。


週刊現代の書評欄では、時々仕事をさせていただいているが、こうしてブログに再録するのは初めてかもしれない。
だからというと、恩着せがましくきこえるだろうか。でも、ぜひ、ご一読ください。

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『週刊現代』2012年4月28日号 「ブックレビュー」欄 119ページ


『争うは本意ならねど』  著者・木村元彦   評者・渡瀬夏彦
  

 副題が本書の中身を適切に表していて、わかりやすい。すなわち、「ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール」。
 本書冒頭に描かれている2006年11月のアジアカップ最終予選「日本対サウジアラビア」の試合は、評者が沖縄県民になったその年の出来事でもあり、映像として鮮明に記憶している。
 沖縄が生んだ初の日本代表Jリーガー、我那覇和樹の活躍、その得点シーンを祝福してやまなかった気持ちを、今もよく覚えている。
 ところが、我那覇の運命は翌07年、あるスポーツ紙の最悪の「誤報」によって不意に暗転した。
 たった一紙の誤報が、誤解の連鎖を生み、Jリーグという組織自体がとんでもない間違いを犯して我那覇を出場停止処分に追い込み、正当な医療行為を行った医師共々その名誉を著しく傷つけた。なぜ「冤罪」だったのか。日本サッカー協会のスポーツ医学委員長やJリーグのトップがどれほど罪作りな判断を重ねたか。その点は本書を読んで理解してほしい。
 当時のJリーグドーピングコントロール委員長やチェアマンらの間違いやその後の保身のための無反省ぶりを厳しく批判する著者だが、本当の意図は糾弾そのものにはない。
 この理不尽な騒動に巻き込まれながらも、ひたすら耐え、そして起ち上がった我那覇の勇気こそを称えている。我那覇に誠意溢れる手紙を送り、起ち上がることを促した浦和レッズのドクターをはじめ、彼を支えた人たちの奮闘ぶりをも丁寧に伝えている。Jリーグの全チームドクターが一致団結し、Jリーグ側の過ちを辛抱強く糺そうとする姿など、じつに印象的だ。
 また、故郷・沖縄のサッカー仲間たち、あるいはJリーグ選手会、さらには我那覇が所属していた川崎フロンターレのサポーターたちが、募金活動などで我那覇を全面的に支援したことも描かれ、それが読後、何よりの希望として胸に残る。
 本書を読めば、尋常ではない苦難を乗り越えた我那覇和樹の今後に注目し、しっかり応援したい、という思いが胸の深いところから湧いてくる。我那覇は今、日本フットボールリーグに属する故郷・沖縄のチームFC琉球に昨季から在籍し、今季主将を務めている。Jリーグへ参入の夢を果たすため、チームに貢献すべく、日々奮闘中である。


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縁は異なもので、じつは3月のホーム開幕戦の日、ある雑誌の仕事で、元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏にインタビューする機会があった。このことも、わたしがFC琉球をもう一度見直すきっかけになった気がしている。

失礼ながら、わたしはFC琉球の総監督に就任して以来のトルシエ氏(今は中国の2部リーグ監督を務めつつ、琉球でのスーパーバイザーを兼任)をほとんどまともに評価していなかった。
語弊を恐れずあえていえば、高い給料をもらって客寄せパンダを演じているにすぎない人、という厳しい評価をしていた。

ところが、インタビューしてみて、イメージはがらりと変わった。沖縄の歴史や文化への理解力も相当にある。
真摯な質問には真摯に答えようとする生真面目さと情熱も伝わってきた。

トルシエ氏のインタビュー当日、球団関係者とコミュニケーションを取れたことも幸いだったかもしれない。わたしのなかの、この球団に対する「わだかまり」の部分が、ほどけていくのが自分でも感じ取れた。

どんな立派な人物が大上段に構えた「論理」より、ひょんな些細な「縁」が人を動かしていくという場面は、この世界においていくらでもある。

そんなこんなで、わたしは心からFC琉球をまじめに追っかけ、応援してみたい、という気持ちになっている。          

もちろん、そう思わせてくれた最大の功労者、我那覇和樹に感謝したい気持ちでいっぱいである。我那覇が沖縄のチームに所属するきっかけをつくった男、前監督の新里裕之氏(我那覇の高校時代からの親友)にも、心から感謝したい。開幕戦は、前半しか観ることができなかったが(トルシエ氏には、「だからあなたのせいで負けたんだ」と真顔で言われてしまったが…苦笑)、琉球に1-0で勝利したブラウブリッツ秋田のヘッドコーチは新里氏であり、我那覇は得点こそならなかったが、昨季とは違うキレのある動きを披露した試合でもあった。
心からFC琉球を応援するようになった本当の理由。

 

このところベンチ入りせず調整中のようだが、得点王を狙う高橋駿太とのツートップをやはり観てみたい。我那覇の体調が万全なら、相乗効果はすさまじいものになるはずだ。
心からFC琉球を応援するようになった本当の理由。



ちなみに下の写真は、4月28日、ハットトリックを決めた高橋駿太の2点目のフリーキック。少しわかりにくいかもしれないが、撮った筆者としては、ちとお気に入りの一枚である。
心からFC琉球を応援するようになった本当の理由。



それでは、きょうは、こんなところで。

心からFC琉球を応援するようになった本当の理由。






        



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Posted by watanatsu at 18:57 │スポーツ