てぃーだブログ › 渡瀬夏彦の「沖縄 チムワサワサ~ 日記」 › 時事問題 › 極私的ニュース解説。「鳩山沖縄訪問」9紙社説について。

2010年05月07日

極私的ニュース解説。「鳩山沖縄訪問」9紙社説について。

極私的ニュース解説。「鳩山沖縄訪問」9紙社説について。



5月4日の「鳩山首相・沖縄訪問」を受けて、新聞各紙の5月5日付社説は、当然この問題を取り上げていた。わたしは沖縄の地元紙2紙を含め、9紙の社説をネット上で読んだ(一部は紙面をじかに手にしている)。

内容は、皆さんお察しの通り、「鳩山批判」のオンパレード。
しかし、はっきり言って、それだけ書くなら小学生だってできることである。
注意深く見なければいけないのは、こういうときだからこそ、単純な「鳩山叩き」以外の本質論を書いている社説か否か、である。

                   *

「極私的ニュース解説」であるからして、ここで各紙を平等に扱う気持ちはハナからない。
まずは、論外というしかない社説から。

「対米追従・沖縄切り捨て」の「確信犯」代表である「読売新聞・社説」「産経新聞・主張」は、あいかわらずの暴論を展開しているだけなので、早い話が読む価値なし。

読売新聞・2010年5月5日・社説
[首相沖縄訪問]遅すぎた方針転換と説得工作

産経新聞・2010年・5月5日・主張(他社の社説に当たる)
[首相沖縄訪問] もはや現行計画しかない

記事URL(アドレス)さえ紹介する気にならないので、どうしても気になる方は、ご自分で調べていただきたい。

日本経済新聞・2010年5月5日・社説
首相は在日米軍の役割を正確に説け
http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE2E4EAE3E5E3E5E2E2E7E2E7E0E2E3E28297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D

日経は、読売・産経とほぼ「同罪」である。
台湾海峡・北朝鮮情勢、あるいは中国の軍事力そのものへの「抑止力」として、沖縄に海兵隊が必要だという暴論で押し切ろうとしている。
軍事同盟至上主義者が「ソ連が北海道に攻めてくるぞ」と叫んでいた、冷戦時代のあの感覚とまったく同じ。仮想敵に対する強迫観念に凝り固まっていて話にならない。「抑止力」以前の「外交努力」の必要性について、ちょっとは書いてみたらどうなのか。

                    *

というわけで、県外の皆さんに、まず絶対に精読していただきたいのは、沖縄の地元紙、沖縄タイムスと琉球新報、両紙の社説である。そしてじっくり考えていただきたい。

あなたはこの大問題を、鳩山個人に責任を押し付けてすませようとしていませんか。あなたは、大新聞のおバカな論説委員たちと同様に、「思考停止」のまま、過重な基地負担を沖縄県民に押し付けて、平和をむさぼっているだけではありませんか。。。

つまりはつまり、そういう話なのである。

                    *

沖縄タイムス・2010年5月4日・社説
[鳩山首相来県]
県内移設は無理だ
海兵隊の必要論議論せよ
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-05-04_6230/

沖縄タイムス・2010年5月5日・社説
[首相「県内」容認]
何を信じろというのか
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-05-05_6259/

琉球新報・2010年5月5日・社説
[首相来県]
民意傾聴し「県内」断念を
新基地建設しては禍根残す
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-161672-storytopic-11.html

                    *

徳之島が「移設先候補地」として取りざたされてしまった地元・鹿児島県の南日本新聞も気になるところだ。

南日本新聞・2010年5月5日・社説
[首相沖縄訪問]
期待あおった責任重い
http://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201005&storyid=23764

しかし、次のようなくだりを呼んで、がっかりした。

《沖縄に継続して負担を求めることについて首相は「日米同盟や抑止力という観点から、すべてを県外というのは現実的には難しい」と説明した。これは当初から指摘されていたことである。問題を認識しながら、沖縄県民に期待を抱かせる発言を繰り返した首相の責任は重大だ。》

鳩山を批判するのはもちろん構わないのだが、専門家からも大いに疑問の声が上がっている、沖縄の海兵隊の「抑止力」をすんなり肯定してしまっているのは困ったものである。

                    *
毎日新聞・2010年5月5日・社説
[首相の沖縄訪問]
今さら「県内移設」では
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100505k0000m070107000c.html

毎日社説は、《現行案にこだわる米側の意向に配慮して「辺野古の海」への基地建設に回帰し、米政府と一緒になって基地の県内たらい回しを押しつける--首相発言は沖縄県民にそう映っているに違いない。「移設先は辺野古以外に」という昨年12月の首相の言葉もほごになった。》と指摘しているのはよいとしても、結論を次のような方向に持っていってしまう。

《今回の沖縄訪問で「5月末決着」が極めて困難であることが改めて明らかになった。普天間飛行場の継続使用という最悪の事態が現実味を増している。5月末決着に「職を賭す」と明言した首相の言葉は重い。実現できなければ、首相の政治責任が厳しく問われることは免れない。》

これではもう申し訳ないが「小学生でも言える」範疇にとどまってしまうことを意味する。
なんとなく参議院選挙前に決着したいという理由だけで5月末という期限をもうけた鳩山首相を叩くのも当然ではあろう。しかし、5月末の期限にこだわらず、「抑止力」の真偽を検証し、本質的な基地負担分担の「国民的議論」を起こし、アメリカと対等に交渉せよ、と本来は書くべきなのではなかろうか。

                 *

朝日社説はどうだろう。

朝日新聞・2010年5月5日・社説
[首相沖縄訪問]
月末までに何ができるか
http://www.asahi.com/paper/editorial20100505.html?ref=any#Edit1

やはり、5月末にこだわり、毎日と同じような穴にもぐりこんでしまった。
ただ、他紙社説が無視した首相の次の言質を紹介したことには、意味がある。

《首相はまた、「将来的には、グアム、テニアン移設は十分にありうる」とも述べた。》
そこから一歩踏み込み、「月末までに何ができるか」ではなく、「危険な普天間基地を即刻撤去した上で、中長期的な展望のもとに、アメリカとの対等な議論を深めよ」、そう書いてほしかった。

                     *

結論的紹介になるが、東京発の社説のなかで、いちばんまともだったのは東京新聞である。
皆さんも、じっくり読んで、「普天間問題」を考えるときの参考にしていただきたいと思う。

極私的ニュース解説。「鳩山沖縄訪問」9紙社説について。



東京新聞・2010年5月5日・社説
[首相沖縄初訪問]
今さら「県内移設」とは
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2010050502000082.html
(以下、全文引用)
 
 鳩山由紀夫首相が沖縄県を初めて訪問し、米軍普天間飛行場の県内移設の意向を明言した。公約破りは明白だ。「国外・県外移設」を託した沖縄県民をはじめ国民を裏切るもので到底看過できない。
 
 首相は仲井真弘多沖縄県知事に「県外は現実的には難しい。沖縄に負担をお願いしなければならないという思いで来た」と語った。

 首相は衆院選で「県外が望ましい」と公約。党首討論では「腹案がある」と断言し、「命懸けで行動する。必ず成果を挙げる」と大見えを切った。

 そんな首相から、今さら県外移設の難しさを聞かされるとは、知事も思っていなかっただろう。

 首相はその理由を「日米同盟や抑止力の観点から難しい」と説明したが、米側が抑止力維持を理由に県内移設に固執するのは最初から分かっていたはずだ。なぜ今さら言い出すのであろうか。

 首相は記者団に「学べば学ぶにつけ、沖縄に存在する米軍がすべて連携し、抑止力が維持できるという思いに至った」と語った。

 公約は浅慮からだというのか。結果的に国外・県外移設は選挙目当ての甘言だった。国民を欺いた首相の政治責任は極めて重い。

 在日米軍基地の約75%が集中する沖縄県民の基地負担軽減や、普天間飛行場の国外・県外移設の検討、緊密で対等な日米同盟関係の追求など、鳩山内閣が目指そうとした方向性は評価していい。

 問題は、その実現に向けた意欲と政治手腕が欠けていたことだ。

 首相が、国外・県外移設に死力を尽くした形跡は見当たらない。

 第一、首相はオバマ米大統領との会談で、国外・県外移設を提起したことがあるのだろうか。

 米海兵隊の抑止力とは何か、なぜ沖縄に基地がなければならないのか。そんな基本的議論すら、政府内から何一つ聞こえてこない。

 仮に国外移設が難しいとしても沖縄以外の都道府県への移設をどこまで本格的に検討したのか。

 部隊の一部移設先に挙がった鹿児島県・徳之島では大規模な反対集会が開かれた。沖縄同様、戦後の米軍統治を経て、基地への抵抗感が強い徳之島を候補にすること自体、安易に過ぎる。

 沖縄では基地負担の押し付けを本土による「差別」とする意見が公然化している。真摯(しんし)な努力を欠く首相に、県内移設受け入れを求められても、沖縄県民は納得できないだろう。

 首相は、思慮の浅さと政治手腕の拙劣さを猛省すべきである。

(以上、2010年5月5日付・東京新聞社説)

他紙同様、首相批判に傾いてはいるが、「鳩山全否定」ではない。「抑止力」に関する議論の欠如についても、しっかりと書いている。こういう正常な論説あるいは報道を、これからも期待したい。

普天間問題を迷走させた責任は、じつは鳩山首相よりも、本質論を一切展開せず、思考停止のまま、世論を間違った方向に誘導する報道を繰り返した大手メディアにある、とわたしは睨んでいる。

今も、防衛・外務官僚や官邸の思惑通りのリーク情報や、その意に沿うコメンテーターの暴言を垂れ流し、「対米追従・沖縄切り捨て」(=沖縄の自然を破壊し、沖縄の民意を踏みにじる「現行案」回帰)路線を邁進しているメディアが目立つ。

国民一人ひとりが、危機感をもって中央発のメディア情報を眺めないと、大変なことになる。


(冒頭の写真は、昨日都心に出かけたときに携帯で撮影した国会議事堂です)



同じカテゴリー(時事問題)の記事

Posted by watanatsu at 09:32 │時事問題