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2014年05月16日

毎日新聞・西部本社版「オキナワ2014.5」シリーズ。第4回、照屋義実さん(沖縄県商工会連合会長)


第4回は、建設会社・照正組社長で県商工会連合会長も務める照屋義実さん。

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オキナワ2014.5◇4 
建設会社社長・照屋義実さん 基地返還で経済振興

毎日新聞 2014年05月08日 西部朝刊

 ◇「オール沖縄」団結を
 「それまでの知事の発言を考えれば『まさか承認ではないだろう』と予想していたんですけどね」。沖縄本島南部の与那原(よなばる)町で創業64年の建設会社「照正(てるまさ)組」を経営する照屋義実(てるやよしみ)さん(66)は慎重な口ぶりで振り返った。
 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設を巡り、沖縄県の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事は昨年末、名護市辺野古沿岸部の埋め立てを承認した。多くの県民が県内移設に反対する中での判断に、今も賛否が渦巻く。
 県商工会連合会長も務める照屋さんは「会長としての発言はできない」と断りながらも「個人として」「知事の判断も理解はできる」とした上でこう言う。「自分も県内移設反対を訴えてきたが、埋めがたいギャップができてしまった。そのギャップをどう埋めたらいいのか。そんな苦渋の中にある、今も」
 2010年から2年間、県建設業協会長を務めていた時から県内移設反対を訴えてきた。経済界トップが基地問題で反対を明言するのは異例だ。「沖縄経済の基地依存率は今や5%。那覇市の新都心地区など米軍基地の跡地はいずれも発展している。基地を早く返還してもらい、新しいまちづくりをした方が県民の幸せにつながる」
 その思いは「沖縄経済は米軍基地で成り立っている」との誤ったイメージがある本土への強い憤りでもある。
 経済的な理由だけではない。「沖縄戦で多くの命が失われ、不平等な日米地位協定のため痛ましい事故が毎年のように起きる。一人の沖縄県民として何が正しいかを考えると、命の上に経済合理性を置くべきではない」
 自身を「宮森世代」と呼ぶ。1959年、うるま市(旧石川市)の宮森小学校に米軍機が墜落、住民17人が死亡した戦後沖縄最大の米軍機事故。犠牲者の中に、同じ学年の児童がいた。「同世代の思いを伝える義務がある」からこそ、米軍輸送機オスプレイの配備に反対し、2012年9月の県民大会では実行委員会の共同代表に就いた。
 普天間の県内移設断念やオスプレイ配備撤回などを政府に直談判した昨年1月の「東京行動」でも先頭に立った。安倍晋三首相に手渡した「建白書」は沖縄の全市町村長らが署名した「オール沖縄」の決意だったが、自民党県連が公約を撤回して辺野古容認に転じ、知事の埋め立て承認で「オール沖縄」は崩れた。
 だが、照屋さんはあきらめていない。「沖縄が党派を超えてスクラムを組み、相当な覚悟で臨まないと日米両政府を動かすことはできない。オール沖縄への思いは変わらない」【佐藤敬一】=つづく
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 ■人物略歴
 ◇てるや・よしみ
 米国統治下の沖縄から本土に渡り、福島大を卒業。商社勤務を経て本土復帰後の1974年に照正組入社。沖縄県教育委員長などを歴任し、2012年から沖縄県商工会連合会長。


◇渡瀬の感想◇

照屋さんの発言はわたしも以前から注目している。
利潤を追求することが最大の使命である沖縄経済界トップの立場にありつつ、「基地が沖縄経済を阻害している」という厳然たる事実について、きちんと指摘し続けている人だ。

ちなみにこれを書いたのも、第3回に続いて佐藤敬一・那覇支局長である。

財界人にもいろいろいる。暴走する安倍政権の尻馬に乗って、とっくに根拠の破綻している「新基地建設」や「埋め立て利権」で目先の利益を確保しようと躍起になっている愚かな人びともいる。経済界の誰の声を取り上げるかは、重要だ。
つまり、この西部本社版朝刊の5回連載のなかで、照屋義実さんが登場した意義は大きいはずだが、しかし東京夕刊では(上)(中)(下)の3回連載になってしまったので、第3回のももココロさん、第4回の照屋義実さんが割愛され、せっかくの(那覇支局による)沖縄での取材が紙面に生かされていない。
これには疑問を感じざるを得ない。関係者の皆さんに、沖縄県民からの苦言として伝われば幸いである。

ちなみに照屋義実さんの地元紙での発言は、わたしも2012年9月の当ブログで紹介したことがあった。ぜひご一読を。
http://watanatsu.ti-da.net/e5280499.html

また、沖縄タイムスでは、福島民報との合同企画『二つの故郷~国策のはざまで~』の連載が続いているが、5月13日から15日までの3回にわたって、若き日福島大学で学んだ照屋義実さんをクローズアップしている。まだ読んでいない方は、ぜひチェックされたし(当方でも、追ってなんらかの形で紹介したいと思っている)。

それから、照屋さんも佐藤記者も使った「オール沖縄」という言葉についてだが、普通に考えれば、自民県連・沖縄の自民党国会議員5人・仲井真知事が「県外移設」の公約を破り捨てた時点で「オール沖縄」は崩れた、という物言いは正しいのかもしれない。しかし、ところがどっこい、沖縄は死なず、というところをはっきりと示すために、心ある沖縄県民は再結集しようとしている。裏切り者の罪は深いが、しかし、その罪を糾弾しているだけでは、「沖縄の民意の分断工作」を企図した安倍暴走政権、自民党本部の思うツボということになってしまう。

これからの「オール沖縄」の民意の再構築を思うとき、この記事で示されたような、財界人としての照屋さんの苦悩を軽んじてはいけないと思う。



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Posted by watanatsu at 09:42 │人物論時事問題